思いやりの気持ちを育てる
更新日:2021年2月26日
子供の頃に「本を読みなさい」と言われて育った人は多いことでしょう。本を読む利点としてまず思い浮かぶのが、読解力がつく、理解力がつく、漢字を覚える、文章力が増すなどがあります。
そしてもう一つ忘れてはならないのが、他者を思いやる心が育つというものです。
子供を持つ親に「どんなお子さんに育てたいですか」と質問すると、本をよく読む子と同時によく耳にするのが、思いやりのある子という声です。
最近の研究では、本、特に小説を読むことにより、他者の気持ちに思いを馳せる力が増すという、一石二鳥の効果が明らかになりました。
セオリー・オブ・マインド(ToM)
セオリー・オブ・マインドという言葉をお聞きになったことはありますか。略してToMと呼ばれることもありますが、これは人間が持つ心の状態を推し量る能力のことを指しています。
ここでいう心の状態の中には信条、意思、願望、感情や知識が含まれますが、状態を推し量る相手は他人ばかりではなく、自分自身に対する内観も含まれます。
内観力が増すとより自分を理解できるようになり、自己肯定感や判断力の向上に繋がります。
科学研究が明らかにした思いやり向上法
社会心理学者エマニュエル・キャスターノの研究では、読書によって人のToMが変化するかどうかを査定しました。
被験者を小説の抜粋を読むグループ、ノンフィクションを読むグループ、そして何も読まないグループに分けました。
その直後に行われた査定によると、小説を読んだ被験者は、ノンフィクションや何も読まなかった被験者より情緒指数や認知指数が高いことが分かりました。
この結果を受けてキャスターノは、小説は人生の機微などの描写が多く、これを読んだ人々のToMレベルが一時的に上がったようだと述べています。
相手の立場や思想を理解できる人になる
人間の様々な葛藤や文化、生活などの描写が多い小説を読み続けると、子供だけでなく大人のToMも長期的に向上する可能性があるのではないでしょうか。
もちろん相手の立場を理解するからと言って、常に同意する必要はありません。しかし相手をきちんと理解しなければ、反対意見を述べるのも難しいでしょう。
また小説だけでなく質の高い漫画なども、ToM向上につながるのではと推察されます。
ただ漫画は絵像も提供するので、もしかすると想像力や空想力は小説を読む方が、向上するかもしれないですね。
参考資料
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